高木遺跡
- 調査期間
- 平成27年5月~平成28年2月(調査終了)
- 場所
- 須賀川市浜尾字高木
- 該当時代
- 古墳・奈良・平安時代
- 調査原因
- 浜尾遊水地内における掘削工事
高木遺跡は阿武隈川左岸の沖積地に立地する遺跡です。 試掘調査では奈良・平安時代の竪穴住居跡や溝跡が確認されています。
6月12日の様子
作業員さんを導入した本格的な調査がはじまりました。竪穴住居跡や古代の畑跡と思われる畝(うね)が見つかっています。
7月14日の様子①
竪穴住居跡の調査をしています。
写真は古墳時代前期(約1,700年前)の住居跡で、焼土(しょうど)や炭化した木材が出土している事から火災に遭ったと思われます。
7月14日の様子②
竪穴住居跡の調査をしています。
写真は平安時代(約1,200年前)の住居跡です。壁際にカマドや貯蔵穴(ちょぞうけつ)が造られており、その周辺から甕(かめ)や杯(つき)といった土器が出土しました。
8月6日の様子
古墳時代後期の竪穴住居跡を調査しています。
完形の甕(かめ)・甑(こしき)・杯(つき)といった土器が多く出土しています。
写真は杯が出土した時の様子です。
8月18日の様子
調査区南側では掘立柱建物(ほったてばしらたてもの)跡が検出されています。
平面形は長方形で、身舎(もや)の周りに廂(ひさし)がつく構造のようです。周りからは中世の陶磁器片が出土していることから、中世の建物跡と考えられます。
9月2日の様子
調査区南西側で、幅3m前後の溝で方形に区画された遺構が検出されました。溝を含めた全体の規模は東西約25m、南北約18mです。今のところ区画内に建物跡などの痕跡は確認できず、遺物も出土していないことから性格などは不明です。現在は溝の掘り下げを進めているところです。
9月24日の様子
以前紹介した古墳時代後期の竪穴住居跡と同時期のものが続々と見つかっています。写真はカマドから出土した土器の様子です。大小の甕(かめ)が並んで出土し、左側の甕の中には杯(つき)が入っていました。出土状態から、カマドを壊した後に意識的にこれらの土器を遺棄(いき)していったと想定されます。
2月26日の様子
2月をもちまして、平成27年度の高木遺跡(たかぎいせき)の発掘調査が終了しました。約10か月にわたる調査の結果、当初の予想を大幅に上回り、弥生時代後期・古墳時代前期・古墳時代後期・奈良~平安時代・中世と、複数の時代にわたり、人々が断続的に生活していた事が明らかになりました。
弥生時代後期は、明確な遺構は土坑のみで、そこから完形の土器が出土しました(写真1)。
[写真1]弥生土器の出土状況
古墳時代前期は、出土した遺物の中に北陸や関東など他地域の影響を受けたものや、北陸から持ち込まれたと考えられる土器や土製品が確認されました。当時の交流を考える上で貴重な資料です(写真2)。
[写真2]古墳時代前期の土器
古墳時代後期は、正方形の竪穴住居跡が確認され、規模に着目すると一辺約10mのものと6mのものに分けられます。これらの住居跡には壁の中央にカマドが造られています。カマドの周辺には日常生活で使用した甕(かめ)・甑(こしき:蒸し器の一種)・杯(つき)・鉢(はち)などの土器類が多く残され(写真3)、当時の生活の様子をうかがい知ることができます。また、住居跡やカマドの堆積土からは、玉類・石製模造品(せきせいもぞうひん)・鏃形土製模造品(やじりがたどせいもぞうひん:写真4)といった祭祀の道具が出土しています。住居の廃絶に伴い何らかの祭祀をした事が考えられます。
[写真3]古墳時代後期の住居跡
[写真4]カマドから出土した鏃形土製模造品
奈良~平安時代も多くの竪穴住居跡が見つかりましたが、注目されるのは4号掘立柱建物跡(ほったてはしらたてものあと)です(写真5)。この建物跡は、直径約1mと規模の大きい柱穴(はしらあな)で構成されます。こうした特徴を持つ建物跡は一般的な集落跡ではあまり確認されません。高木遺跡周辺には古代石背郡(いわせぐん)の役所跡が存在した栄町遺跡(さかえまちいせき)があり、そこで確認された建物跡と共通する特徴を持つことから、何らかの関連が考えられます。
[写真5]古代の掘立柱建物跡
中世は、掘立柱建物跡・方形区画・井戸とみられる土坑などが確認されました。なかでも1号方形区画は、東西長24.5m×南北長16.2mの大型遺構です(写真6)。幅3.7m、深さ1.3mの溝で区画され、南東隅には内部への入り口があります。しかし区画の内部からは建物跡や遺物は確認されませんでした。わずかに、溝の底面から14世紀の常滑焼(とこなめやき)の破片が出土したことで中世の遺構と判明しました。また、1号方形区画の西側には、同様の構造で規模が4分の1程度の2号方形区画が存在します。これらの遺構は何らかの宗教的な施設と考えられます。今後はこの遺構に隣接する、溝と柱列で区画された掘立柱建物跡との関係も含めて検討していきます。
[写真6]中世の遺構群
なお、高木遺跡については平成28年度も調査が行われる予定です。今年度調査した分の整理作業も含め、今後も新たな発見が期待されます。