令和3年度発掘調査情報

日南郷遺跡ひなごういせき

調査終了
調査期間
令和3年4月~9月
場所
双葉郡富岡町大字上手岡字日向郷遺跡
該当時代
古墳時代
調査原因
主要地方道小野富岡線(高津戸工区)の整備

日南郷遺跡・高津戸館跡の紹介

 遺跡調査部では、主要地方道小野富岡線(高津戸工区)整備事業に関連して、令和3年5月から双葉郡富岡町に所在する日南郷遺跡及び高津戸館跡の発掘調査を実施しています。小野富岡線は「ふくしま復興再生道路」に位置付けられ、避難解除区域の復旧・復興、住民の帰還促進等に向けた道路の整備工事が進められています。しかし、高津戸工区の東に接する夜の森地区は、そのほとんどが未だ帰還困難区域で、有名な夜の森公園の桜トンネルもゲートで閉ざされています。
 日南郷遺跡は、JR常磐線「夜ノ森駅」の西約2㎞の地点にあります。遺跡の地形は、阿武隈高地東縁の麓に形成された河岸段丘面です。今回、調査の対象となった箇所は、東西約1.3㎞、南北約0.5㎞に及ぶ長大な日南郷遺跡の東端部です。
 日南郷遺跡の調査の結果、6世紀前半頃と考えられる古墳時代後期の集落跡を発見しました。確認した遺構は、竪穴住居跡5軒、溝跡2条等です。各竪穴住居跡からは土師器と呼ばれる土器が出土し、中には赤く塗られたものもあります。古墳時代の土器は、焼成方法が異なる土師器と須恵器に大きく分けられますが、土師器よりも高級品とされる須恵器は出土していません。このことから、今回発見した集落跡の住人は、庶民的なグループだったのかもしれません。6世紀前半台頃に忽然と現れた古墳時代の集落跡ですが、開拓を目的に移住してきた人々の居住地だったのでしょうか。なお、日南郷遺跡の発掘調査は、8月で終了しました。
 現在は、日南郷遺跡の北東側にある高津戸館跡の調査を行っています。高津戸館跡は中世の城館跡とされていますが、謎も多い遺跡です。今回、調査の対象となった箇所は遺跡の南西部で、土塁・堀などの遺構が確認できます。
 最後に随分昔のことですが、春、仕事で現場に向かう途中、夜の森公園の桜トンネルを通過したことがあります。丁度、風の流れに乗って舞い散る桜吹雪に遭遇しましたが、その時の感動は今も忘れられません。

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日南郷遺跡(竪穴住居跡分布状況(上空から)

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作業風景(住居跡検出作業)

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5号住居跡全景(南から)

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5号住居跡遺物出土状況(西から)