調査研究コラム

#049 公開型遺跡データベースその後 藤谷 誠

1 はじめに
 2008年に福島県文化財センター白河館の研究紀要に各県の公開型遺跡データベースの状況をまとめた。当時、遺跡データベースを公開していた県は7県あり、うち、4つの県でGIS(Geographic Information Systemの略)を利用したデータを公表していた、あれからすでに8年の歳月が流れた。ここで、改めて公開型遺跡データベースの現況について簡単にまとめてみたい。

2 遺跡データベースの定義と項目
 今回は、地図の地点または項目を選択することで検索が可能なタイプのものを遺跡データベースと定義した。したがって、単に遺跡地図をPDF化してWeb上に公開しているものや、HTMLのリンクのみによってデータを公開しているものを除いている。対象範囲は、都道府県としたので、国や市町村のシステムは除外したが、遺漏があればご容赦願いたい。
 最初に遺跡データベースについて、以下の4項目を設定した。
1GISシステムを使っているか。
2GISシステムについて他のシステムと共有しているものか。
3GISではない画像地図を使っているか。
42つ以上の項目から検索することが可能か。

3 各項目に基づいた遺跡データベースの状況について
 2008年度に調査した時点では、7ヶ所(市町村を除く)であったのが、8年を経過した現在では21ヶ所となった。2008年当時と比較すると3倍まで増えていており、急速に普及した状況が認められる。
各遺跡データベースサイトについて4項目についてまとめたものを表1とした。表1を元にいくつか特徴的な類型が認められたので、以下で概観したい。

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表1 都道府県の遺跡データベース

(1)GIS型データベース
 今回導入を確認した21ヶ所のうち約8割強の18ヶ所でGISシステムが導入されていた。前回は7所中5ヶ所と7割強であったものが、GISシステムの導入が進んでいることが伺える。中には全く同じシステムを導入している県(京都府と茨城県)があるのも興味深い。
 このタイプのデータベースで特筆されることは、全県的な共有GISシステムの中に遺跡関係の情報を入れ込んで公開しているパターンが、17ヶ所中8ヶ所と半数近くを占めている点である。2008年の段階では、全県的な共有GISシステムに組み込まれていたのが、富山県1ヶ所であったのと比較すると、急速に普及したことが伺える。文化財側での独自開発によるものではなく、全県的な開発に乗っかる形であるので、導入・運用コスト面で有利であることも、急速な普及の一因であるかもしれない。
 更に、項目検索の可否について確認してみると17ヶ所中9ヶ所と約半数については、遺跡名や時代、種別等で検索することが可能であった。共有GISとそうでないもので比較すると、共有GISでは、8ヶ所中3ヶ所と半数以下であるもるが、独自GISについては、11ヶ所中6ヶ所と半分以上のサイトで項目検索ができるシステムであった。
 全県的GISシステムに乗る形で遺跡データベースを公開すると、確かにコスト的には安価であるが、その分共通仕様に縛られるなどの制限があるのかもしれない。
(2)GISシステム以外のサイト
 圧倒的多数のサイトがGISシステムを利用して、遺跡データベースを公開しているが、高知県、島根県と当財団が管理するサイトについては、GISシステムを利用せず、遺跡の各テキストデータ項目と地図をリンクする形でシステムが構築されている。当然、検索はテキストベースの項目選択/入力であり、地図から検索をすることはできない。
 島根県と当財団が管理するサイトについては、後述するように検索項目が他のシステムよりも多くなっている。

4 検索項目について
 検索可能な項目については、その種別を表2にまとめた。全21サイトの中で、半数以上の13サイト(埼玉県のサイトはメンテナンス中であったため、除いている。)が、地図からだけではなく、2つ以上のテキストベースの検索項目から、遺跡を検索することが可能であった。
 検索項目としては、①名称関係(遺跡名)、②所在地情報(住所・市町村名)、③その他の遺跡属性(時代・種別・地形・標高等)、④管理的データ(遺跡番号・指定の有無・調査歴)の4つのカテゴリーがある。
可能の検索項目については、2~4項目が5サイト、5~9項目が5サイト、10項目以上が1サイトとなっている。概ね4~6項目の検索が多い(7サイト)。
 共通検索項目については、市町村名と時代、種別が11サイト中10サイトと最も多く、遺跡名が9サイトとこれに次ぐ。基本的な共通検索項目については、概ね遺跡名、市町村名、時代、種別となっている。

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表2 検索項目

5 サイトの構成と想定されている活用方法について
 サイトの構成(上位サイトの有無)、利用上の注意事項等、その他の項目について、表3にまとめた。
 各遺跡データベースが公開されているサイトには、それが独自で構成されているものの他に、利用規約等が別サイトにありそこから誘導されるサイトがあった。約半数の9サイトについては、都道府県及び都道府県教委が入口となるものがあり、利用規約に同意してから遺跡データベースのサイトが開かれるものもあった。
また、大きな埋蔵文化財関係のデータベースの一部として遺跡データベースが提供されているサイト(鹿児島県と福島県)もあり、当財団の文化財データベースについては、写真や文献等の他の関連データも検索できる仕様となっている。
 サイトに明記されている利用上の注意事項のうち、免責事項、著作権表記、利用方法の詳細有無、都道府県教委や市町村教委への照会案内の有無の4項目についてまとめた。免責事項の表記については、3サイトを除く17サイトに明記されていた。地図上の範囲については、権利関係や文化財保護法との関係(掲載地図は周知の遺跡のみで、未発見の遺跡は掲載されていないので、開発行為を行う上で注意が必要)もあるため明記する必要があったと想定される。著作権表記については、15サイトに明記されていた。使う地図については、民間業者作成のものと国土地理院作成のもの、行政側が作成したもの等が混在している。利用方法については、詳細が記載されているサイトが9サイトと半数近くであった。検索項目の多寡に関連していると思われる。
 詳細事項についての照会先を明記しているものが、11サイトと半数以上あり、遺跡データベースの利用方法の想定をする上で興味深い。すなわち、埋蔵文化財の位置を明示し、それを周知することによって、開発計画側がそれを利用することも使い道の一つとして想定されたものと推定される。
 その他の項目については、簡易な検索画面の有無について表記した。4つのサイトで簡易に検索することが可能なページが作成されていた。利用想定対象者について、特に学校教育との連携が想定されているものと推定される。

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表3 上位サイトと利用上の注意事項等

6  まとめ
 以上、平成28年秋段階での都道府県作成の遺跡データベースについてまとめてきた。全体を通じて、以下の点が認められた。
 ・遺跡地図にGISシステムを使ったものがほとんどを占めている。
 ・半数以上のシステムは、開発側が遺跡地図を利用することを想定していると思われる。
 ・教育普及部門との連携を想定しているシステムもある。
 現在、想定される利用方法としては、1行政的な文化財保護のための埋蔵文化財の周知活動としての利用、2教育普及部門で地域史を学ぶ一環として利用、3一般市民や研究者による地域歴史研究の一環として利用の3つが考えられる。
 1の利用方法については、遺跡の範囲は表面調査や開発、不時発見等により変化するものであることを想定する必要がある。GISシステムは、その範囲を容易に変更することができることが強みであるが、人的労力もそのメンテナンスに応分なものが必要とされることに留意したい。
 2については、GISを利用した遺跡データベースのみで達成することは難しいかもしれない。一部のシステムに見られるようなHTMLと連携することによって、より内容のあるシステムになると思われる。実際に検索トップーページにリンクを作成しているサイトもあった。さらに3とも共通するが、遺物や写真などの出土遺物も関連させて検索できるシステムとするとより、内容が濃いものとなると思われる。
 3については、検索の項目について、より吟味し、すぐに必要なデータを取り出せるような項目についてあらかじめ選定する必要があると思われる。遺跡データベースに使われている主な検索項目、遺跡名、市町村、時代、種別のみでは対応が難しいと思われる。テキストデータのキーワード検索を入れるのも一つの手段かもしれない。
 以上、簡単にまとめてみたが、今後の遺跡データベース構築の一助となれば幸いである。

<引用・参考文献・サイト>
2008 藤谷誠「公開型遺跡データベースについて」『福島県文化財センター白河館研究紀要2008』(財)福島県文化振興事業団
群馬県:マッピングぐんま 遺跡・文化財 http://www2.wagmap.jp/pref-gunma/top/ 群馬県
富山県:富山県GISサイト http://wwwgis.pref.toyama.jp/toyama/Default.aspx 富山県教育委員会
京都府:京都府市町村共同統合型地理情報システム 遺跡マップ
http://g-kyoto.gis.pref.kyoto.lg.jp/g-kyoto/top/ 京都府教育庁指導部文化財保護課
茨城県:いばらきデジタルまっぷ 文化財 http://www2.wagmap.jp/ibaraki/top/ 茨城県
静岡県:静岡県埋蔵文化財包蔵地システム
https://www.pref.shizuoka.jp/kyouiku/kk-100/houzouchisystem/riyouhouhou.htm 静岡県教育委員会
愛知県:マップあいち 愛知県文化財マップ http://maps.pref.aichi.jp/ 愛知県教育委員会
大阪府:大阪府地図情報提供システム 文化財地図
 http://www.pref.osaka.lg.jp/jigyokanri/cals/tizu.htm 大阪府教育委員会
岡山県:おかやま全県統合型GIS 埋蔵文化財(遺跡)
 http://www.gis.pref.okayama.jp/map/top/index.asp 岡山県教育庁文化財課
北海道:北の遺跡案内 http://www2.wagamachi-guide.com/hokkai_bunka/ 北海道教育委員会
千葉県:ふさの国文化財ナビゲーション http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbbunkazai/
千葉県教育委員会
東京都:東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス http://tokyo-iseki.jp/ 東京都教育委員会
石川県:いしかわ文化財ナビhttp://www.bunkazainavi.pref.ishikawa.lg.jp/ 石川県教育委員会
鹿児島県:埋蔵文化財情報データベースhttp://www.jomon-no-mori.jp/kmai_public/ 鹿児島県立埋蔵文化財センター
秋田県:秋田県遺跡地図情報 http://common3.pref.akita.lg.jp/heritage-map/ 秋田県教育庁 生涯学習課文化財保護室
宮城県:宮城県遺跡地図情報
 http://www.pref.miyagi.jp/site/maizou/bunkazaimap.html
宮城県教育委員会文化財保護課
岐阜県:岐阜県域統合型WebGIS岐阜県発掘調査遺跡マップ
https://gis-gifu.jp/gifu/maps.action?mp=977 岐阜県教育委員会
奈良県:奈良県遺跡地図Web http://www.pref.nara.jp/16771.htm奈良県教育委員会
高知県:高知県文化財地図情報システムhttp://bunkazaimap.kochinet.ed.jp/ 高知県教育委員会文化財課
福島県:文化財データベース http://www.mahoron.fks.ed.jp/search.html(公財)福島県文化振興財団・福島県教育委員会
島根県:島根県遺跡データベース http://iseki.shimane-u.ac.jp/ 島根大学地域貢献推進協議会

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図1 富山GISサイト(富山県)

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図2 マップあいち愛知県文化財マップ(愛知県)

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図3 ふさの国文化財ナビゲーション(千葉県)

#49_07.jpg図4 秋田県遺跡地図情報(秋田県)

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図5 埋蔵文化財データベース(鹿児島県)

#49_09.jpg図6 文化財データベース(福島県)