まほろん通信10号 1 2 3 4ページ

 まほろん秋のてんじ  

跡から鉄剣が出土しました。鉄剣をレントゲン撮影すると剣の両側に象嵌が確認されました。梵字と炎の文様が金と銀で象嵌されています。象嵌の内容から、この鉄剣は不動明王像の持つ剣である可能性があります。
 3 上ノ原経塚出土品(いわき市)
 この経塚は平安時代終わり頃のもので、石を積み重ねた小さな石室に銅製の経筒を安置し、石室の周囲を小刀や矢尻で守るように取り囲んだ状況が確認されました。
 特に注目されたのは経筒の内側から朱書きの紙本経(法華経)が8巻発見されたことです。平安時代の経典の実物は県内では会津高田町に伝世品があるのみで、貴重な発見となりました。


<上ノ原経塚出土品>

ふくしまの重要文化財U
―考古資料 奈良・平安時代編ー

 期間 10月18日(土)〜11月24日(月)
 まほろんの秋のてんじは「ふくしまの重要文化財2」を開催します。縄文・弥生時代の指定文化財を紹介した昨年度に続き、第二弾として奈良・平安時代の重要文化財(国・県指定)を展示公開します。
 県内のこの時期の重要文化財(考古資料)は12件指定されており、とくに経塚や密教など古代仏教関連の器物が多いことが特徴といえます。展示品の一部を紹介しましょう。
 1 松野千光寺経塚出土品(喜多方市)
 この経塚の発見は古く、出土品は江戸時代に一度発見され、埋め戻され、昭和9年に再発見されたという数奇なエピソードが伝わっています。その中身はお経を入れた銅経筒、それを入れる石櫃(大治五年(1130)の銘が刻まれています)のほかに独鈷杵・磬・五鈷鈴などがあり種類が豊富です。
 2 流廃寺跡出土金銀象嵌鉄剣 (棚倉町)
 町の中心部の南東側に位置する丘陵上には平安時代の山岳寺院の跡が無数に確認されています。この中の建物

 シリーズ復元展示  以上のようなことから、今回の復元では、獣脚と容器は製品同士を接合したと考えるより、鋳型同士を組み合わせたものに、鉄を一緒に流し込んだものと結論づけました。この推測は、鋳型からも裏付けられました。すなわち、獣脚鋳型をよく観察すると、接合部分に当たる鋳型の厚みが他の部分より非常に薄い作りとなっています。容器鋳型に獣脚鋳型を埋め込んで接合した場合、必ず、獣脚鋳型の厚みが生じます。接合部分が薄いのは、この厚みを極力減らし、仕上がった製品に、その厚み部分が見えないようにする古代人の工夫のためと判断しました。
 このように古代の技術を推測し、復元しました。できあがりを見てみると、一緒に鋳込んだにもかかわらず、獣脚と容器の接合面は、あたかも別々に作って接合したように見えます。もし、古代の遺跡から接合したような状態で鉄製品が出土したら、よくよく観察し、様々な角度から検討を加えないと、接合方法の推測はできないものだと、痛感いたしました。
<獣脚と容器の接合部分/完成した獣脚付き容器>

鋳型からみた鉄製品の復元 その3

 前回、古代における金属同士の接合方法には、大きく3つの方法があることをお話しいたしました。今回は、これらとは異なる方法によって写真に示した獣脚付き容器が復元されたことをお話しいたします。最初に、前回示した3つの方法を簡単におさらいしてみましょう。
 @機械的接合法…鋲を使用したり、“かしめ(棒の  両端をつぶして止める方法)”で止める方法
 A科学的接合法…有機系の接着剤(漆や“ニカワ”  など)で貼り合わせる方法
 B金属学的接合法…接合面に何らかの金属を用い、  熱して一体化する方法(鍛接や銀鑞などを使用し  た鑞接技法、あるいは鋳掛け法など)
 さて、今回は、いずれの方法も採用しませんでした。それは、機械的接合法の場合、厚さ3.5pもある鉄製品(獣脚部分)に穴を開けるのが非常に難しいと思われることと、その穴は獣脚の上部にある顔付近に当たるため、顔に傷が付いてしまうからです。また、漆やニカワと言った有機系接着剤では、当然のことながら、接着後、使用に耐える状態にはなりません(火を焚くことなどが想定されますので、燃焼により接合がとれてしまいます。)。さらに、鑞接技法では、局所的に接合箇所を熱しなければなりません。この局所を熱するには、ガスバーナーのように炎の大きさを調整する工具が必要になります。

まほろん通信10号 1 2 3 4ページ