１ 金沢製鉄遺跡群
飛鳥時代から平安時代の前半にかけての行方郡では、製鉄（鉄づくり）が盛んに行われていました。この時期は、中央政権による東北支配・開発が開始され、それが活発化する時期です。支配領域を拡大する過程において、宮城県北部以北に住んでいた蝦夷と呼ばれる人たちとの軍事衝突も度々発生しました。その東北支配・開発の拠点となったのは陸奥国府多賀城です。そして、それを支えたのが行方郡などで生産された鉄です。鉄は武器だけでなく、農具や工具に加工されたものと推測されます。
当時、製鉄を行った遺跡の一つ金沢地区製鉄遺跡群は、南北を真野川と新田川に挟まれた丘陵の東端に位置し、東は太平洋に面しています。ここには、約１�匯擁�の範囲内に合計11遺跡が存在し、製鉄炉123基、木炭窯152基、鍛冶炉20基をはじめ、竪穴住居跡・須恵器窯跡など多くの遺構が見つかっています。そのことから、ここは国内最大級の一大製鉄コンビナートであったと考えられています。
 |
 |
|
| 空から見た金沢地区 | 真上からみた金沢製鉄遺跡群 |
２ 金沢における鉄生産の始まり
金沢地区で最初に鉄の生産が開始されたのは、飛鳥時代の初め頃（７世紀中ごろ）です。金沢地区製鉄遺跡群南東部の鳥打沢Ａ遺跡の11号製鉄炉・14号木炭窯・１号須恵器窯において、鉄・木炭・須恵器が生産されました。
11号製鉄炉は、この遺跡群から見つかっている他の製鉄炉と趣が少々異なり、当時の吉備地方（今の岡山県）の製鉄炉に似ています。
14号木炭窯は、「ヤツメウナギ」とも俗称される横口付木炭窯で、窯の胴部に材を出し入れするための穴がたくさん開いています。このような窯は、この遺跡群からは他に見つかっていません。当時の西日本に特徴的な窯です。
１号須恵器窯では、杯・蓋・高杯・盤・平瓶・甕・亀の形をした硯などが焼かれていました。亀の形をした硯は７世紀に畿内で流行していたものです。
このように、生産が始まった頃には西日本との関係がうかがえます。
 |
||
| 鳥打沢Ａ遺跡11号製鉄炉跡 | ||
 |
 |
|
| 鳥打沢Ａ遺跡１号須恵器窯跡 | 鳥打沢Ａ遺跡14号木炭窯跡 | |
