平成30年度 文化財講演会

縄文マジカル・ミステリー 



 平成30年4月28日(土) に「縄文マジカル・ミステリー」と題した講演会が行われました。講師は、縄文時代研究の専門家の森幸彦氏です。

 

 日本人のルーツについては、最近になって報告された新地町三貫地貝塚出土人骨の核DNA分析結果から、現代日本人が三貫地縄文人から受け継いだ遺伝要素は12%であり、縄文人が私たちの直接の祖先の一つであること、意外に弥生時代以降の大陸から渡来した人々との混血が進んだ可能性が大きいことが判ってきたと報告されました。

 次に新地町の三貫地貝塚の調査成果が報告されました。石鏃が刺さった人骨からは、樹上狩猟の可能性、2体の人骨の合葬例からは子供の再生願望の可能性、成人男性の近くに葬られた犬の埋葬事例からは、犬の魂が人間を霊界に導く役割を果たした可能性を示しました。

 さらに縄文土器については、「土器の中は、自然界のあらゆる奪われた生命が詰まった死の 世界であり、そこに火の魔法をかけることで、人の生命エネルギーとして再生」するところに本質があるとされました。この本質から、土器とは生命を産み出す母親の胎内であり、子どもの再生を願う装置としても機能し、土器文様は再生のための「呪文」のような役割で、縄文中期の関東甲信地方では、水〔死〕と陸〔生〕の世界を行き来する動物(両生類)がデフォルメされて描かれ、一方、東北地方南部の土器では、生命の芽生えを象徴する植物(ワラビ)が デフォルメして描かれた可能性があると話されました。