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第1回 企画展 速報展

テーマ「いにしえの隈畔人のくらし」
会 期 平成14年4月27日(土)〜5月26日(日)
場 所 当館特別展示室

 那須の山懐に源を発し,県の中央を南北に縦断して流れる阿武隈川。全長240q近いこの大河はいにしえから、稲作や舟運などの多くの面で私たちの生活を支えてきました。しかしその一方では、洪水などの災害も引き起こし、大切な生命や財産を奪うこともありました。
 阿武隈川流域の市町村では、近年、築堤や開発に伴い多くの遺跡で発掘調査が行われてきました。その結果、縄文時代や古墳時代の貴重な資料がたくさん見つかりました。今回の企画展では、それらの資料を速報展として展示します。展示資料から阿武隈川流域に生活した、いにしえの隈畔人の暮らしに思いをはせていただければ幸いです。

見つめてみよう土器の表情
 縄文土器は大変個性的です。その文様や器形など土器の豊かな表情をじっくりと鑑賞してください。

いにしえの装い
 遺跡から出土した土偶や埴輪を見ると、いにしえ人の装いの様子がわかることがあります。今回紹介する遺跡からも耳飾り、首飾りが出土しており、それらを展示します。

 <展示室のようす>

いにしえの祭祀
 縄文時代のまつりに使われた土偶や石棒などの品々、古墳時代に石で作られた鏡、剣、玉などのまつりに使われた資料を展示します。

工人の技
 本宮町の遺跡から石製の紡錘車の製作工程が分かる一括出土した資料を工程順に紹介します。

古墳の土器と家の土器
 保原町の前方後円墳と本宮町の住居跡から出土した土器セットを比較展示します。

きわだつ逸品
 須恵器の逸品、円面硯、ミニチュア石棒など滅多に出土しない珍しい資料を展示します。


<鋳込み作業>

シリーズ復元展示

三角縁神獣鏡の復元 その4

 実験成功!
 実験の結果は上々でした。なにより、1枚の鋳型から最高で4枚の鏡を鋳出すことに成功したことは、実物の半分の大きさとはいえ、大きな成果でした。この同笵鏡の製作を可能にしたアイディアは、鈴木さんと小田部さんから出された「二層構造」の鋳型でした。
 1個の鋳型から複数の鏡を鋳出すには、鋳型が何回もの鋳込みにも耐える頑丈さを備えていなければなりません。かといって鋳型を頑丈にすると、高温の溶銅から出るガスの抜けが悪くなり、その結果、文様が不鮮明に鋳あがってしまいます。この矛盾する二つの長所だけを合 わせもつ鋳型が、ガスの抜けの良い鋳型を頑丈な粘土版に貼り付けた二層構造の鋳型というわけです。
 この鋳型を用いて鋳込んだ鏡には、三角縁神獣鏡の秘密にせまる成果がもう一つえられました。それは、鋳出された「ヒビ」です。
 三角縁神獣鏡の特徴の一つには、鋳型についていたと思われるヒビが鋳出されているという点があります。しかし、なぜそのようなヒビができるのかという理由についてはわかっていません。二層構造の鋳型の乾燥を終えたとき、二つの層の収縮率のちがいで鋳型の表面に本物とそっくりのヒビができていました。この鋳型からヒビのついた鏡ができあがったのです。

 

 いざ、復元
 いよいよ会津大塚山古墳と岡山県鶴山丸山古墳の兄弟鏡の復元に移りました。準備は万端、復元にかけるみんなの意気ごみも充分です。いよいよ灼熱の炉から真っ赤にとけた銅・スズ・鉛の合金がトリベに取り出され、鋳型に流し込まれます。第1回目の鋳こみは成功です。問題はこれからです。同じ鋳型からもう1面の鏡を作ることができれば、この復元は初めて成功したと言えます。 はたして、2度目も成功、2面の兄弟鏡の復元は成功したのです。
 まほろんに展示してある三角縁神獣鏡は、こうして復元されたのでした。

(おわり。次号からは古墳時代の刀編です。)

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