埴輪にみる芸能(げいのう)と習俗(しゅうぞく)
−泉崎村(いずみざきむら)原山(はらやま)1号墳(ごうふん)の埴輪−


盾持ち人

 原山1号墳は、昭和52年に近所に住む少年が土取り工事現場から力士(りきし)の埴輪を採集して公民館に持ち込んだことからその存在が注目されました。その後、福島県立博物館の発掘調査によって、全長20m以上の前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)であることがわかり、古墳をめぐる溝の中から多くの埴輪が出土しました。
 原山1号墳からは、とくに人物の埴輪が多く見つかっています。人物の埴輪が登場した天王壇古墳の時期以降、人物の埴輪がより多く立て並べられるようになったことがわかります。原山1号墳から出土した埴輪には前述の力士の埴輪のほか、口を「へ」の字に曲げて怒(おこ)った表情をもつ盾持(たても)ち人(びと)、胸のふくらみから女性とわかる巫女(みこ)の埴輪、くちばしの先が曲がった鷹(たか)の埴輪などが出土しています。注目されるのは、琴(こと)などの楽器を演奏(えんそう)し、おどりを踊(おど)る楽団(がくだん)を表現していると思われる人物埴輪の一群です。これらの埴輪はそれぞれかわった形の帽子をかぶり、腰帯(こしおび)を前で結んだおそろいの服、顔の両側にたれる美豆良(みずら)とよばれる髪形など、共通する特徴をもっています。