まほろん実技講座
「カラムシから布をつくろう」の様子
 平成25年6月29日(土)・7月20日(土)・8月31日(土)の3回にわたり、まほろん実技講座「カラムシから布をつくろう」を実施しました。まほろん敷地内で栽培するカラムシを刈り取り、繊維を取り出して、糸をつくり、布にするまでの工程を体験しました。
 

第1回:6月29日(土)

1.刈り取り

 第1回目の講座は、まほろん「古代の畑」で栽培しているカラムシの刈り取り作業から始まりました。
 カラムシは4月下旬から芽を出し始め、背の高いものでは、およそ2mほどに生長しています。
 布づくりに必要な繊維は、カラムシの茎の部分から取り出すので、葉はその場で取り除きます。この日は、1人15〜20本を目安に刈り取りました。

     
 

2.カラムシを水に浸す  

 刈り取ったカラムシの茎は、長さを切り揃えて、水の入った容器に約1時間ほど浸します。
 こうすることで、繊維を含んだ表皮を剥(は)ぎ取りやすくなります。

     
 

3.皮を剥(は)ぐ

 水に浸したカラムシの茎は、根に近い部分を手で折り、表皮と芯の間にできた隙間に指を入れて表皮を剥(は)ぎ取って、内側の芯は取り除きます。
 初めてこの講座に参加した方も、すぐに慣れて、するすると上手に表皮を剥ぎ取っていました。

     
 

4.苧(お)引き 

 次に、表皮の内側にある白い繊維を取り出すために、板の上で水に濡らしながら、金属製のヘラで表面の緑色の部分を取り除いていきます。この作業を、「苧(お)引き」といいます。
 表面の緑色の部分を取り除くと、「キラ」と呼ばれる光沢のある白い繊維が現れてきます。これがカラムシ織の材料になります。
 きれいな「キラ」を取るためには、ヘラを持つときの力の入れ方がポイントです。参加者の皆さんは、少しでもきれいな「キラ」を取り出せるように、頑張っていました。

     
 

第2回:7月20日(土)

5.糸つむぎ

 第1回の講座で取り出したカラムシの繊維から、糸をつむぐ作業を行いました。
 まず、職員が糸撚(よ)りの手順を説明しながら、実演しました。繊維は水に浸してから裂(さ)いたものを2本用意します。
 両手の指で同じ方向に撚(よ)りをかけ、逆方向に絡めていくと、摩擦で糸が戻りにくくなります。両手の指をうまく使い、続けて撚(よ)っていけるようにします。

     
 


 手順を学んだら、参加者が糸撚(よ)りに挑戦です。
 長い糸にするには、新たに繊維をつぎ足しながら、撚(よ)っていかなければなりません。太さを均一にしながらつないでいけるかどうかがポイントです。
 第2回は、ひたすら糸をつむぐ単純作業なので、手順に慣れてくると、参加者同士で楽しく会話しながら作業をする光景も見られました。
 この日は、ある程度、糸をつむぐ感覚を身につけてもらい、残りは各自持ち帰って、次の第3回の布づくりまでに、経糸(たていと)にするのに必要な長さまで、糸をつくってきてもらいました。

     
 

第3回:8月31日(土)

6.アンギン編み

 第3回では、各自でつむいできた糸を持ち寄って、いよいよ布づくりに挑戦です。布づくりは、アンギン編みという古くから伝わる技法で行います。
 アンギン編みは、溝のある横棒を渡したアンギン台に経糸(たていと)をかけて、緯糸(よこいと)と絡ませながらく編んでいく方法です。
 コースターの大きさ(約10cm四方)まで編むのが目標です。まずは、職員が編み方の説明をしました。

     
 

 

 おもりとなるコモツチ(菰鎚)を10本の経糸に結わえ付け、アンギン台にかけたら、いよいよアンギン編みの開始です。
 今回は、越後地方(新潟県)に伝わる‘越後アンギン’と呼ばれる技法で行いました。これは、通常のアンギン編みとは異なり、緯糸を3本使って順に折り返しながら、目を一つ飛ばしに交互に編んでいくやり方です。
 緯糸が1本だけの場合よりも、少し難しいですが、きめの細かい美しい編み目になります。

     
 

 

 ‘越後アンギン’の編み方では、目を一つ飛ばしに絡めていき、緯糸を折り返すたびに絡める経糸が交代します。
 10本の経糸は左から順に番号を付け、1番、3番、5番・・と絡めてから、緯糸を折り返したら、今度は2番、4番、6番・・と、奇数・偶数が交互に編まれることになります。
 最初は間違わないように、職員も応援しながら、慎重に編んでいきました。

     
 

7.アンギンの完成!

 約10cm四方の大きさまで編めたら、経糸をコモツチからはずして、ほつれないように結び、余った経糸を切り揃えて完成です! さらに2枚目にチャレンジした参加者もいました。
 今回は、ほとんどの参加者がアンギン編みは初めてで、大昔から伝わる布編みの技術を知って、大変に驚かれていました。
 最後は、完成したアンギンを持って、記念撮影♪
 カラムシの繊維の取り出しから、糸づくり、布づくりと、自分の力で苦労してつくった作品を手に、皆さん、満足していただけたようです。