5 情報発信計画

(1)データベースシステム
a データベースの検討
 平成6年度に福島県文化センター事業第二部遺跡調査課(現遺跡調査部遺跡調査課)で情報処理委員会(平成7年度以降は情報管理委員会)を組織し、課内のネットワーク整備とともに将来の文化財センターの設立を見越してデータベースシステムの検討を行った。
 データベースシステムの中では、その対象を絞り込む必要があった。遺跡調査で得られる成果物には、遺物・写真・図面・報告書等があり、今後の資料整理とデータ化双方を考えた対象を選定するための検討を重ねた。平成6年度の検討結果については「文化財情報のOA化マスタープラン」(課内文書)としてまとめた。
 また、用語についても職員間でまちまちであり、それを統一し、円滑な検索を行うためのコード化も必要であったため、課内に設置した文化財用語検討委員会で検討するとともに千葉県等の先進県の例を元に検討を進めた。
b 設計と入力
 平成6年度と7年度の検討結果を元に、平成7年度にデータベースの基本的な設計を行い、12月に「データベースシステムの導入」(課内文書)としてまとめた。
 様々な資料の中からデータベース化する対象は、遺跡資料、遺物資料、写真資料、文献資料の4つとした。
 また、利用するデータベースシステムは、先進県の例にならって、リレーショナルデータベースを念頭に置いて、表の設計を行い、表の設計結果については合計13の表からなる「データベースファイル規定書」にまとめた。現在のシステムは若干の改変はあるもののこの表が元になっている。
 用語とコードについては、「コード・用語集」として、時代、遺物種類、遺構等についてコード化を行っている。
 表に付随する画像データについては、写真資料が平成7年度、それ以外が平成8年度に大枠を設計している。
 入力は、平成7年度から一部開始し、現在まで継続している。表のデータについては一般的な表計算ソフトを利用して入力を行い、それを蓄積する方法を取った。画像関係では、平成7年にコダック社のPhotoCDシステムを導入し、報告書に掲載された遺跡・遺構の写真についてのデジタル化を開始している。データベースに取り込むデータは、1/4BASEデータとした。これ以外の遺物実測図、遺跡地図のデータの取り込みには、フラットベットスキャナーを利用している。
c システムの導入
 平成11年度にハードウエアの一部であるデータベースサーバー等を導入し、画像データ等一部データの入力を行った。データ件数が膨大なため(全データ量20万件以上と予想)、データベースサーバーには一般的なPCサーバーではなく、UNIXサーバーを1台導入した。また、検索エンジンにはデータベース分野で安定した実績がある日本オラクル社のオラクルを採用した。
 平成12年度には、基本設計を元に文化財データベースシステム実施設計を行い、プログラム作成を外部に委託した。システムの内容は、データ入力システム、データ検索システム、収蔵資料管理システム、データ管理システムの4つのシステムとなっている。それぞれのシステムは下記に示すような要件で、画面・機能設計を行った。
 データ入力システム
・CSVファイルによるデータの追加・更新が容易にできること
 データ検索システム
・Webを利用したシステムであること
・検索結果について表計算ソフトでも容易に開ける形式でダウンロードできること
・画像データについても、印刷に耐えうる品質でダウンロードできること
 収蔵資料管理システム
・遺物、写真、文献を管理出来るシステムであること
・遺物、写真については収蔵場所の情報も簡易に取り出せること
・各資料の閲覧、貸出に対応可能なシステムであること
 データ管理システム
・入力、検索情報が月単位で取り出せること
・検索情報については、館内とそれ以外が分離できること
d データベースの公開
 データ検索システムの作成過程で、平成12年12月に1ヶ月ほどインターネット上での試験公開を実施し、動作テストを行って13年度の正規公開に備えた。
 データベースの公開は、ホームページの正式公開日である平成13年7月14日に行い、当面、遺跡・遺物・写真の4つのデータベースを公開した。(文献データについては、遺跡調査部収蔵文献の閲覧等の問題がクリア出来ないため、外部公開を先送りとした。)

ホームページ初期画面

(2)ホームページの公開
a 発信計画の策定
 平成11年度に文化財センターでの情報発信計画の検討を行った。その中で、盛り込まれている内容は施設・業務・行事案内、一般県民や子供を対象とした文化財の解説ページ、発掘調査速報、文化財データベース、文化財図書案内等である。
 また、情報発信に利用するサーバーは独自に立ち上げる計画とした。
b 試験公開
 平成11年11月から、福島県教育センターのサーバーを利用して試験公開を開始した。初期の公開内容は施設紹介や遺跡調査課で調査した調査成果であった。
 平成11年度はホームページの内容について、フロッピーディスクに入れてデータを渡していたが、平成12年度からは教育センターと文化センターとの間にネットワークが繋がり、ネットワーク経由でデータの転送を行うことが可能となった。
 その後、教育センターに立ち上げていた試験ページには、プレイベントのようすや施設のようすを追加した。(写真参照) 
c システムと本公開
 平成13年度に白河館が設立され、5月に本格的にネットワークシステムを導入した。インターネット用のサーバーは安定性やDBサーバーとの相性からUNIXサーバーとし、白河館の内容のみならず、当財団の他の施設(文化センターや歴史資料館等)のホームページのコンテンツも同じサーバーに収めることにした。コンテンツの追加・更新にはFTPを利用している。
 インターネットサーバーは、同時にメールサーバーの機能も兼ねており、財団職員の電子メールの管理も同じサーバーで行っている。
 ホームページの正規公開は開館日前日の7月14に実施した。初期コンテンツとして、施設案内の他、文化財データベースを独自コンテンツとして公開している。
 また、来館者用の端末として館内の閲覧相談コーナーに2台のパソコンを設置し、そこでデータベースを含めたホームページを閲覧出来るようにした。初期段階では、外部のホームページもアクセス可能とした。

開館時のネットワーク構成

(3) ネットワークシステムの導入
a 計画の策定
 白河館設立を念頭に入れた情報発信のためのネットワーク計画として、平成11年度に白河館に独自の情報公開用のサーバーを設置し、福島との間に直接専用線を敷設する広域ネットワーク(WAN)案を策定した。
 ところが、この年の12月に県の財政課から教育庁内の教育センターが基幹となる総合ネットワーク(ふくしま教育総合ネットワーク=FKS)に乗り入れる案を斡旋され、当初計画を大幅に見直す結果となった。
 その後、FKSの担当課である教育庁総務課と県教育センターとの間で接続に向けての協議を重ね、ネットワーク構成の要件として、
1) データベースとホームページの連動が容  易であること
2) 情報発信に際して画像の転送等がスムー  ズに実施できる回線品質であること
3) 白河−福島間がWindowsレベルでのネッ  トワーク構成がとれること
の3点を挙げて協議に臨んだ。
 また、財団全体でFKSに接続するにあたり、接続の費用面や将来像について、文化課と財団で協議を持ち、接続の方針が了承された。これを受けて、平成12年5月に、福島の文化センターと教育センター間に128kbpsの専用線を結びWANを構成し、IPレベルでFKS傘下のネットワークとして既存のネットワークの再構成を行った。
 更に平成12年度に平成13年度以降の電子メールとホームページの弾力的な運用を検討したところ、教育センターのサーバーを利用するには制約事項があった。そのため、以下の2つの要件を新たに加えることにした。
4) 財団の白河館以外の施設のホームページ  も白河館で一括管理できること
5) 財団職員の電子メールを管理できること
b システムの導入
 白河館設立後は、白河館に民間プロバイダの1.5Mbpsの専用回線を敷設し、インターネット回線を利用して、教育センターと接続し、両施設間のルータの設定を教育センターの協力の下で行い、WANを構成した。
 また、館内のネットワークについては、拠点である事務室と展示準備室間が100m近くになるところから、その間に本体工事とは別に光ファイバーケーブルによる配線を敷設した。各部屋への配線は拠点から本体工事の中でUTPケーブルを敷設した。
 開館時のネットワーク構成は下図となっている。