〔31〕 笊内37号横穴墓出土銅鋺の鋳造復元工程    長谷川 克義

今回の銅鋺についての復元は先ず鋳造方案を考え、
@ 実測図に基づき挽型板を作成
A 挽型板を用い、蝋による原形を作成
B 原形に湯口・堰等を取付け、それを鋳物土で包み鋳型を作成
C 鋳型の焼成と地金の鋳型への流し込み
D 鋳型の割出しと湯口・堰等の切断と荒仕上
E 金工轆轤によるせんがけ加工とその後の処理
という工程で行った。

1 鋳造方案
 鋳造作品を制作する上での全体計画を「鋳造方案」と呼ぶが、その検討が充分でないと鋳物は出来ない。それは、原形・鋳型には何が良いのか、湯口・湯道・堰の位置をどこにとるのか、鋳込をどのような方法で行うか等、あらゆる事柄がある。
 今回、銅鋺の鋳造方案を検討するにあたって複数を制作することから、実測図より金属の収縮、金工轆轤による加工などを考慮して、約5o厚さを均一にとるため挽型を使用した蝋原形による真土型を用いた。また、実物の観察やX線透過写真資料によると底部外側からの一本堰と推察できたが、復元としてものが出来ることを優先して口縁から数箇所に堰をとった。

2 地金
 地金については、東京国立文化財研究所(現 独立行政法人文化財研究所 東京文化財研究所)の平尾良光氏の成分分析を基に、銅80%、錫15%、鉛5%の割合で合金したものを使用した。
 これはサンプルの採り方でかなりばらつきはあるが、鋳造についてこの比率ならば、経験上問題が起こる確率は少ない。ちなみに青銅で錫が多くなると地金の色は白くなり、硬く且つ脆くなる。また、銅が多くなると地金の色は赤くなり、柔らかく且つ粘くなる。

3 鋳造
 前日より鋳型の乾燥・脱蝋を行い、当日約800℃で焼成を行った。溶解については、コークス炉により溶解した。鋳型が約300℃に冷めた頃、1060℃前後の湯温で注湯した。

4 鋳造後の仕上加工
 湯道、堰を切取り荒仕上げをした後、金工轆轤で内外面のせんがけ加工を行った。このせんがけ加工は特殊な技術である為、富山の和田任市氏にお願いした。
 実測図に合わせ0.3〜1.0oの厚みに加工をしたが、実物と比較検討を行い合計3回の加工を行った。また、よりものに近付けるため、ワイヤーブラシやサンドペーパーを使用し最後の仕上げを行った。

参考文献
戸津圭之介「鋳金の技法「古代鋳造文化財の技法研究と今後の課題」」『学術月報』1998.1
桜岡正信・神谷佳明「金属器模倣と金属器」『財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団 研究紀要』1998.3